ホテル・旅館の電話対応コストを可視化する方法|計算式と試算例【2026年版】

更新:2026/07/22

電話問い合わせのコストを可視化する方法

この記事からわかること

  • 電話対応にどれくらいの人件費がかかっているかを試算する方法
  • 現場の負担を「感覚」ではなく「数字」で整理するための進め方
  • 算出したコストを、FAQ・チャットボット・IVRなどの投資判断につなげる考え方

こんにちは。ホテル・旅館の業務効率化とCX向上を支援する「talkappi(トーカッピ)」編集部です。

「毎日、電話対応ばかりに時間を取られている」
——そんな悩みを抱える宿泊施設は少なくありません。

ただ、その負担が月にいくら、年間にいくらの人件費ロスになっているのかまで、具体的な数字で把握できている施設は、意外と多くないのではないでしょうか。

現場では確かに忙しい。スタッフも疲弊している。
それでも、コストが見えないままだと、経営層に改善の必要性を伝えにくく、FAQ整備やチャットボット導入といった対策の予算もつきにくくなります。

そこでこの記事では、電話対応コストをどう可視化し、DX投資の判断材料につなげるかを、宿泊施設で使いやすいシンプルな考え方で解説します。

1. そもそも電話対応コストとは?フロントの「見えない人件費」の正体

電話対応コストには、直接的な人件費のほか、業務中断による生産性の低下や、回線がふさがることによる新規予約などの取りこぼしといった機会損失も含まれます。ただ、これらは施設ごとの差が大きく、数値化も容易ではありません。

そのため、本記事では、まずは把握しやすい最低ラインとして「直接的な人件費」に着目し、その試算方法を解説します。

ここでいう「直接的な人件費」とは、電話1件にかかった時間が、そのまま人件費になる部分です。

たとえば1件4分の電話が月500件あれば、それだけで毎月2,000分=約33時間分の工数が発生します。最も見えやすく、試算しやすいコストです。

実際、宿泊施設に寄せられる電話の中には、

  • 「チェックインは何時からですか?」
  • 「駐車場は予約が必要ですか?」
  • 「朝食会場は何時から利用できますか?」
  • 「子どもの添い寝はできますか?」

といった、WEB上で自己解決できる定型的な質問も少なくありません。

こうした「誰が応対しても答えが同じになる質問」は、FAQやチャットボットなどによって自己解決へ導きやすく、改善効果も検証しやすい領域です。

また、業務中断による生産性の低下や機会損失を考慮しなくても、直接的な人件費だけで月数万円・年間数十万円規模になるケースは珍しくありません。だからこそ、まずはこのコストを可視化することが、現場の感覚を「予算の話」に変える最初の一歩になります。

フロントで接客中に電話対応が発生し、業務が中断するイメージ

2. 電話対応コストはどう計算する?3ステップの計算方法

電話対応コストの可視化は、そこまで難しくありません。

まずは次の3ステップで、自施設の現状をざっくり把握してみましょう。

STEP1:1件あたりの「平均対応時間」を測る

最初に確認したいのは、電話1件に平均何分かかっているかです。

ここでいう対応時間には、単純な通話時間だけでなく、たとえば次のような時間も含めて考えると実態に近づきます。

  • 館内に確認して折り返した時間
  • 保留中に予約内容や館内情報を調べた時間
  • 同じ問い合わせに対して複数のスタッフが対応した時間

理想は、1〜2週間ほど実測することです。

フロントスタッフ全員で、「この電話は何分かかったか」をざっくりメモするだけでも、かなり参考になります。

もし正確な計測が難しい場合でも、まずは「定型問い合わせは平均3〜5分程度」など、仮の数値を置いて試算を始めるだけで十分です。

STEP2:月間の「問い合わせ件数」を把握する

次に、1か月で電話が何件来ているかをカウントします。

このとき、できれば単純な総件数だけでなく、以下のようにざっくり分けておくと、後の改善方針が見えやすくなります。

  • OTA経由の予約客・検討客からの電話
  • 公式サイト・直予約まわりの電話
  • 宿泊前の定型問い合わせ
  • 滞在中・滞在後の問い合わせ

たとえば、OTA経由の問い合わせが多いなら、OTA側のプラン説明や注意事項の見直しが効くかもしれません。
一方で、公式サイト経由の問い合わせが多いなら、自社FAQや予約導線の改善余地が大きいと考えられます。

また、年間コストを考えるなら、繁忙期と閑散期の差も意識しておくと安心です。可能であれば、通常月だけでなく、繁忙期の件数も見ておくと、より実態に近い試算になります。

STEP3:時給換算 × 繁忙期係数で年間コストを試算する

平均対応時間と月間件数が分かったら、次は人件費に換算します。基本の考え方はシンプルで、次の式で試算できます。

(平均対応時間 × 月間件数 ÷ 60)× 時給 = 月間コスト

たとえば、

  • 平均対応時間:4分/件
  • 月間件数:500件
  • 時給:1,200円

とすると、計算はこうなります。

(4分 × 500件 ÷ 60)× 1,200円 ≒ 40,000円/月

つまり、月間4万円

年間にすると約48万円、繁忙期に問い合わせが増える施設であれば、実態としては50万〜60万円台になるケースも十分ありえます。

ここで重要なのは、この数字はあくまで「電話に出ている時間だけ」を人件費換算した最低ラインだということです。

実際にはここに、先ほどの

  • 業務中断によるロス
  • 予約電話の取りこぼし

といった見えにくい負担も上乗せされます。

それでも、まずはこの「直接的な人件費」だけでも数値にすることに意味があります。現場の感覚だった負担が、社内で共有しやすい「予算の話」に変わるからです。

3. 可視化したコストを、DX投資の判断材料にどうつなげるか

現場から「電話が多くて大変です」と伝えるだけでは、なかなか予算は動きません。大切なのは、「現場の困りごと」を「回収可能なコスト」に翻訳することです。

つまり、

  • 今、電話対応に年間いくらかかっているのか
  • そのうち、どれくらいが削減余地のある定型問い合わせなのか
  • もし自動化できたら、どれくらい回収できるのか

まで示せれば、経営層にとっても判断しやすくなります。

【投資効果のシミュレーション例】

電話コスト削減シミュレーション

たとえば、繁忙期を含めた年間の電話対応コストが60万円だったとします。

talkappiを導入いただいた施設さまでは、JRホテルクレメント徳島さまで最も多かった駐車場に関する電話問い合わせが約6割減少、ホテル一畑さまでは1日数十件あった定型問い合わせがほぼゼロになった事例があります。

ただし、施設規模や客層によって効果の出方は異なります。そこで本記事では、これらの事例よりも控えめな前提として、電話対応工数を50%削減できると仮定して試算します。

この場合、削減できる直接人件費は約30万円です。

ツール費用を年間20万円程度と見込む場合(費用相場はこちらの記事参照)、差し引き効果は約10万円となります。

経営層に説明するなら、「約8か月で投資回収でき、その後は毎年約10万円分の効果が積み上がる」と伝えるとイメージしやすいでしょう。

もちろん、これはあくまで直接人件費のみをもとにした試算です。

実際には、電話対応に追われる時間が減ることで、

  • フロントの負荷が下がる
  • 接客品質が安定する
  • 新規予約の電話を取りこぼしにくくなる

といった副次的な効果も期待できるため、現場では数字以上のメリットを実感するケースも少なくありません。

4. コストが見えたら、次は「どの手段で減らすか」を考える

ここまでで、自施設の電話対応コストがある程度見えてきたら、次は「何を使って減らすか」を考える段階です。宿泊施設の電話対応削減では、主に次の3つが代表的な選択肢になります。

  • FAQ・案内ページの改善
    よくある質問への答えを、ゲストが自分で探して見つけられるようにする方法です。カテゴリ分けや検索機能、回答の書き方を整えることで、必要な情報にたどり着きやすくし、電話せずに自己解決できる状態をつくります。比較的着手しやすく、まず見直したい基本施策です。
  • チャットボット
    ゲストが質問やキーワードを入力すると、自動で回答を返したり、必要な情報へ案内したりする方法です。FAQのように「自分で探す」負担を減らせるため、何を見ればよいか分からない場合や、すぐに答えを知りたい場面にも対応しやすいのが特長です。
  • IVR(電話自動応答)
    電話自体はかかってくる前提で、一次対応や振り分けを自動化する方法です。電話件数が多く、フロントの受電負荷が高い施設ほど効果を感じやすい傾向があります。

どれが合うかは、問い合わせの内容・件数・発生時間帯によって変わります。

まずは「何の電話が、いつ、どれくらい来ているのか」を把握したうえで、自施設に合った手段を選ぶことが大切です。

まとめ

電話対応の負担は、感覚としては強くても、数字にしない限り社内では共有されにくいものです。

だからこそ、まずは「1件あたり何分かかっていて、月に何件あり、年間いくらになるのか」を出してみることが、改善の第一歩になります。

特に、チェックイン時間や駐車場、添い寝条件、館内設備などの定型的な問い合わせは、FAQやチャットボット、IVRなどで自己解決に寄せられる余地があります。

そうした問い合わせにどれだけ時間を使っているかが見えれば、改善の優先順位もつけやすくなります。

いきなり完璧な分析をする必要はありません。

まずは、平均対応時間 × 月間件数 × 時給のシンプルな計算からでも十分です。

「現場が大変」だけで終わらせず、「この業務に年間いくらかかっているのか」まで見えるようになると、次の一手はかなり考えやすくなります。

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